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Designer Interview vol.04 JUN OKAMOTO デザイナー岡本順さん

2021 November.03 #PEOPLE

デザイナーの岡本順さんにご自身のブランド「JUN OKAMOTO」にかける想いや服づくりへのこだわりを伺いました。

もともと母がオーダーメイド服のお店をやっていて、その母の背中を見て育ちました。“服作り”自体が身近にあったこともあり、自分が職業を選ぶときに、その環境の影響を受けたと思います。デザイナーになりたいと思ってから、文化服装学院に入学し、その後フランスに留学。Studio Bercotという学校で2年間ファッションデザインの勉強をしました。留学中はとても刺激的な毎日でしたね。フランス・パリという土地が自分にとても合っていたと思います。

 

フランスで学んだ、“服を着る/着せる”ことの本質

——フランス留学時代の印象的なエピソードなどはありますか?

 

先生から授業で言われた言葉が今も鮮明に残っています。選ばれた生徒数名がモデルとなる生徒をスタイリングして、皆でその姿をデッサンするという授業があって。最後に先生の品評会が始まるのですが、そのとき僕の絵を見た先生から「悪くないけど、実物よりも美しくない。」と指摘されたことがありました。「ありのままの姿よりも良くみえないと、ファッションとしての意味がない」と。ファッションとはそうゆうことなんだ、と思いましたね。それがとても記憶に残っていて、今の自分の服作りにおいても大切にしていることのひとつです。

そしてもうひとつ、アレキサンドル マチューでのアシスタント経験も、自分がこうしてデザイナーになるまでの大きなターニングポイントとなりました。学生だった頃、パリのセレクトショップ・Colette(コレット)のパーティに「アレキサンドル マチュー」のデザイナー2人が来ていて。その場で2人を捕まえて、働きたいと伝えたことがきっかけです。

若手のスターデザイナーとして注目されていた彼らの元で働いていると、たくさんの履歴書が毎日のように届くんですよね。僕のように働きたい人が大勢いるなかで、その中からなぜ自分を雇ってくれたのだろう、と不思議に思いました。

どうやら、そのパーティで当時の僕をみて、「服が好きそう」と思って決めてくれたみたいなんですよね。言葉よりも、服やその人のスタイルに説得力があること、自己プロデュースの大切さを実感しました。特にヨーロッパでは日本以上にファッションのあり方が外側を向いているというか……。自分のひとつめの皮が服、そういう感覚をフランスで学びました。

 

自ら書く物語をコレクションテーマにして展開

シーズンごとにテーマを決めますが、そのテーマに合わせた“物語”をいつも書いています。物語のベースは“彼からみた彼女の服”がコンセプトです。例えば、2021AWコレクションのテーマは“マジック”。主人公の男性が、昔の彼女にマジックを披露して喜ばせるというところから始まるストーリーを書きました。

その物語のテーマを主軸に、服のデザインにも落とし込んでいきます。マジックがテーマなのでトランプのモチーフやトランプ柄、遊び心のひとつとしてあえてハートを入れなかったり……そういった細かなところも楽しんでもらえるといいなと思います。またデザイン面では、ドレープが美しくでるようなデザインやオリジナルのプリント、生地作りにもこだわっています。

より強く人の心に残るものを作りたい

——コロナ禍を経て、ご自身のお考えや作るものに変化はありましたか?

 

ステイホームが続いて世の中がどうなるかわからない状況で、服を作っても誰も必要としていないのではないか、服をつくる意味があるのか、自分が何をすべきか……自問自答し続ける日々でした。服ではなく野菜をつくったほうがいいのではないか、とも(笑)。

でも、いくら考え続けても時間は進んでいくし、中途半端に世の中の需要を気にしながら作るよりも、自分にしかできないものを作ったほうがいい、という気持ちになってきて。悩みながら前に進むほかないと。そう思い至った時に、自分にしかできない服で人の記憶に残るものを表現していきたいとより強く感じました。

服と記憶を繋げる“言葉”を紡いで

15年以上ブランドをやっていると、お客さまが5年前、10年前の服を着てくれていたりすることがあります。10年前の服を、今も大切に着続けるというのは凄いことですよね。その服の何かがその時の気持ちに響いたり、引っかかりのようなものがないと長く心に残らないと思うんです。それで始めたのが、服に名前をつけること。「隠し事ができないトップス」「(マジックの)タネを隠したジャケット」など、コレクションのテーマに合わせた名前をつけているので、面白がってもらえたら嬉しいですね。言葉という形で記憶に残り、その時の気持ちや出来事を思い出せるようなものになればいいなと思います。品質タグにも“服の名前”がついているので、ぜひチェックしてみてほしいです。

写真左:木漏れ日の瞬間に隠されたトップス
写真右:文藝春秋の「文學界」にも物語を寄稿しました。

サスティナブルという観点での取り組み

もともと長く愛される服をつくることを自分のなかで大切にしてきたので、今で言うサスティナブルな考え方ですよね。生地選びからのセミオーダーのほか、着なくなった服を小さいサイズに作り直す「服のリレー」という取り組みもしています。新しい生地やデザインを取り入れてリメイクするのではなく、デザインはそのままに小さく作り直します。着なくなってしまった服をお子さんのサイズに作り直すお客さまが多いですね。

写真左:代官山店舗のインテリア
写真右:「服のリレー」で小さくリサイズされたワンピース

新しいファッションのあり方を見据えて

サブスクとかレンタルのサービスがまだあまり浸透していなかった時代は、おしゃれをするなら日銭を削って……みたいな感覚で、実際自分もそうでした。今この時代に、AnotherADdressのようなファションサブスクで、“買う”以外の方法で服に触れる機会が増えるというのはとても良いことだと思います。純粋に楽しんでほしいですし、“買って、捨てる”を繰り返すのではない、新しいファッションのあり方や楽しみ方として時代にマッチしたサービスだと思います。

>プロフィール

岡本順さん

1997年文化服装学院を卒業後、パリのStudio Bercotに入学。アレキサンドル マチュー(Arexandre Matthieu)のアシスタントを経て、自身のブランド「JUN OKAMOTO」を2002年より、パリを拠点にスタート。2010年より拠点を東京に移し、現在代官山に店舗を構える。

 

JUN OKAMOTO

http://www.junokamoto.com

公式サイトでは、2021AWのコレクションテーマ”マジック”に纏わる物語他、過去のコレクションの物語も掲載。

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