2021 March.17 #PEOPLE
再生した素材を半永久的にリサイクルするという革新的な技術を開発し、国内外の企業から熱い視線が注がれている日本環境設計株式会社の岩元美智彦会長にお話を伺いました。
どこの企業も循環型社会をつくりたいと言うけれども、それを消費者が身近に感じたり、体験する機会は少ない。ヒアリングをして多くの人が、服をリサイクルしたいと思っていることがわかり、生活者とさまざまな企業が一緒になって衣類のリサイクルを行う取り組み「BRING™」を始めました。BRING™の資源が循環する仕組みは、たくさんの人を巻き込んだ循環型社会の形成につながると考えています。
リサイクルというのは継続して使い続けることが非常に大切です。BRING™のケミカルリサイクル技術は異物や汚れなどの不純物を取り除くことができるので、石油からつくられた新品のポリエステル樹脂と同等の品質の再生ポリエステル樹脂を製造することが可能です。
劣化せず何度もリサイクルできる技術、”半永久的な循環”こそ本当の意味でのサスティナブル。これにより今まで焼却されてしまっていたポリエステル製の服を何度でも資源として再生することができ、天然資源である石油の使用量削減、温室効果ガスの排出抑制に貢献することができます。この半永久的なリサイクル技術はグローバルにみても今後面白い展開になっていくと思いますね。
消費者が不要になったものを回収した後は、技術をつないで地上資源をつくり、その地上資源をメーカーが使うことで、店頭にサスティナブル商品が並び、消費者が購入する。そうやって地上資源が循環する経済圏を作りたいと思っています。
そしてこれからの時代、企業単位でリサイクルに取り組むのではなく、みんなで手を取り合って解決していかないと循環型社会は実現しません。まずは社会全体が手をつないで、消費者が参加できるインフラをつくらないといけない。そして消費者がリサイクルを“自分ごと”として捉えてもらえる仕組みができたらと思っています。
では、より多くの人々に“自分ごと”として捉えてもらうには、どうすればよいのか。私たちは「リサイクルを楽しく」を合言葉に、日常の中でよろこびや夢、驚きをかき立てる、楽しい循環の取り組みを提案しています。
着なくなった服をリサイクルしてつくったバイオエタノールで、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズにタイムマシンとして登場したデロリアンを走らせたり、飛行機を飛ばしたプロジェクトの「10万着で飛ばそう! JALバイオジェット燃料フライト」もそのひとつ。
体験・経験をするとリサイクルが自分ごと化しますよね。だからまずは最初の動機付けや参加するモチベーションを高めることが大切。理論よりも体験が必要です。
ファッションがもともと持っている、ワクワクするから買うという商品の価値は非常に大切です。まずは純粋にファッションを楽しむこと、それは外してはいけません。
さらにそこに、リサイクルだからこその価値も今後提供していきたいと思っています。今後の構想ですが、BRING™のリサイクルではトレーサビリティの実現を目指していて、例えば、著名人が着た服がリサイクルにより素材として生まれ変わり、その素材で作られた新しい服であることがわかるような製造の開発をしたいと考えています。履歴価値や歴史価値といった、受け継いでいくというリサイクルならではの新しい価値観も提案していきたいですね。ファッションを楽しむことが結果的にリサイクルや環境にもつながる行動になっていたらいいですし、新しい発想での楽しみ方を見つけてもらえたらと思います。
>プロフィール
岩元 美智彦 Michihiko Iwamoto
日本環境設計株式会社 取締役会長。1964年鹿児島県生まれ。北九州市立大学卒業後、繊維商社に就職。営業マンとして勤務していた1995年、容器包装リサイクル法の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。2007年1月、日本環境設計を設立。資源が循環する社会づくりを目指し、リサイクルの技術開発だけではなく、メーカーや小売店など多業種の企業とともにリサイクルの統一化に取り組む。
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