日本製ならではの精緻な作りと、ファッションの空気をまとったデザインを両立するアイウェアブランド・ブラン(BLANC)。主張しすぎることなく顔になじみ、スタイリングにはさりげない個性を添えてくれる。その絶妙なバランスが、BLANCのアイウェアの魅力です。
今回は、ブランドを手がける渡辺利幸さんに、BLANC誕生の秘話や故郷・福井県鯖江市の職人とのものづくりに込めた想い、アナザーアドレスでレンタルできる今季注目のアイウェアについても伺いました。

——まずは、BLANCを立ち上げるまでのご経歴について教えていただけますか?
渡辺さん:大学時代のアルバイトも含めると、17、18年ほどアパレル業界で働いていました。メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)の立ち上げメンバーとしてブランドに携わった後、セレクトショップで店頭販売と商品のバイイングを担当していたんです。そこでは、国内外のデザイナーズブランドからまだ広く知られていない新しいブランドまで、洋服やアイウェアを幅広く扱っていました。
——そうしたキャリアを経て、どのようなきっかけからBLANCを立ち上げることになったのでしょうか?
渡辺さん:きっかけは、アイウェアをうまく提案できないことへのもどかしさでした。バイヤー時代は、仕入れる商品一つひとつに自分なりの理由を持ち、それをお客様にきちんと伝えることを大切にしていました。洋服であれば「この間買ってくださった靴に合いますよ」とか、「旅行に着ていくなら、こういう合わせ方ができます」とか。その方の生活やワードローブに結び付けながら、いろいろな角度から提案できたんです。
ただ、アイウェアに関しては、当時の僕が説明できたのは「このブランド同士のコラボレーションです」といった表面的な情報くらいでした。お客様から「どうしてこんなに高いんですか?」「紫外線はカットするんですか?」と聞かれても、十分に答えられない。洋服については堂々と接客しているのに、アイウェアになると急に弱くなってしまうことが、すごくもどかしかったんです。
——そこで、アイウェアについてもっと知ろうと考えたのですね。
渡辺さん:そうですね。故郷の福井県はメガネの産地でもあるので、まずは詳しい人に話を聞いてみようと思いました。調べてみると、以前一緒に働いていた知人が福井県でアイウェアの仕事に就いていると分かり相談したんです。そこで初めて、海外ブランドのメガネは欧米人の骨格を基準に作られているものが多く、アジア人の骨格に合わせて調整すれば、もっとかけやすくなることを知りました。実際に可能な範囲で調整してもらうと、かけ心地が明らかに良くなっていて、骨格に合わせるだけでこんなに変わるんだと実感しました。
それなら次は、日本人の骨格に合う国産のメガネを仕入れようと考えたんです。ただ、当時の日本製のメガネは視力矯正の道具としての印象が強く、クラシックなデザインが中心。自分が扱っていた洋服と一緒に提案したいと思えるものは、なかなか見つかりませんでした。だったら、アジアの人の骨格になじみ、日本のものづくりの良さとファッション性を兼ね備えたメガネを自分で作ってみよう。そんな思いから、BLANCを立ち上げました。

——ブランド名の「BLANC」には、どのような意味が込められているのでしょうか?
渡辺さん:BLANCはフランス語で“白”という意味ですが、もともとは“光”を表すブランド名にしたいと考えていました。アイウェアは光がある場所で使うものですから。ただ、光や太陽にまつわる言葉は、すでに多くのブランドで使われていたんです。名前が決まらないままサンプル作りだけが進んでいたとき、友人が「ものに光が当たって反射する艶や光沢を絵に描くときは、白い絵の具を使う」と教えてくれました。その言葉を聞いて「光を色で表すなら白なんだ」と気付いたんです。
白にはニュートラルな印象もあれば、神聖さや清潔感もある。さまざまなイメージを受け止められる色だと思い、フランス語のBLANCという名前に落ち着きました。なので、ブランド名に込めているのは、実は“白”そのものというより“光”の意味なんです。
——光を“白”で表現するという発想が素敵です。BLANCには「817 BLANC LNT」というラインもありますが、どのような違いがあるのでしょうか?
渡辺さん:「817 BLANC LNT」は、BLANCの世界観を引き継ぎながら、海外展開に向けて設けたグローバルラインです。
「817」は、太陽から放たれた光が地球へ届くまでの時間を表す“8分17秒”という数字から着想を得ています。「LNT」は、フランス語でメガネを意味する「リュネット」という言葉を自分なりに略したもの。BLANCに込めた“光”のイメージを崩さないよう、暗号のような二つの言葉でBLANCを挟みました。

——BLANCを立ち上げるにあたり、どのようなアイウェアを作りたいと考えていたのでしょうか?
渡辺さん:ブランドを始めた頃は、ロゴやアイコニックなパーツからそのブランドの個性がひと目でわかるメガネやサングラスが多い印象でした。もちろん、そういうものが好きな方もいます。一方で「サングラスでかっこつけていると思われたくない」「もっとさらっとかけられるものなら挑戦したい」と感じている方もいるはずだと思ったんです。
そこで、存在感はあっても気負わずかけられるもの、日本製ならではのかけ心地がありながら、一瞬インポートにも見えるものを作りたいと考えました。「このブランドを身につけています」と前に出るのではなく、スタイリングの中に溶け込み、身につける人自身の魅力が先に伝わるものにしたい。そんなバランスを目指したんです。
——特定のテイストに偏らず、幅広く展開しているのも印象的です。そこには、どのような考えがあるのでしょうか?
渡辺さん:セレクトショップで販売とバイイングの両方を経験し、さまざまなスタイリングを提案してきたからこそ、自分のブランドも幅広いスタイルに取り入れられるものにしたいと考えました。ヴィンテージ調や男性的なデザインなど、一つのカテゴリーだけで語られるのではなく、さまざまなスタイルになじむニュートラルなブランドにしたかったんです。
——ブランド名の「BLANC」が持つ、ニュートラルなイメージにもつながりますね。豊富な色展開にも、その考えが反映されているのでしょうか?
渡辺さん:そうですね。立ち上げ当初から、メガネ専門店だけでなく、セレクトショップにも置いてもらいたいという思いがありました。当時のメガネ店では、黒や茶を基調とした色が中心でしたが、セレクトショップで洋服と一緒に提案するなら、もっと色の選択肢があってもいい。そう考えて、BLANCでは色展開を豊富にしたんです。
例えば、グレーや黒のニット、ベージュのトレンチコートに合わせたときに映える色があれば、アイウェアまで含めた新しいスタイリングを提案できますよね。洋服を選ぶように、その日の装いや気分に合わせてアイウェアも楽しんでもらいたいと考えていました。
——ブランドを立ち上げた当初と比べて、変わったこと、変わらないことはありますか?
渡辺さん:変わらず大切にしているのは、さまざまなモデルを作りながらも、まずはかけやすいところでデザインを止めることですね。例えば、ティアドロップ型のアイウェアなら、「BLANC」だからではなく、まず「このティアドロップの形が好き」と思ってもらえるくらいのものが理想です。ブランドのデザインを押し出しすぎず、その方のスタイルに入っていけるものにしたいという考えは、当初から変わっていません。
一方で、スタッフが増え、メガネ店や販売の現場で経験を積んだメンバーから、以前の自分にはなかった知識や視点が入ってくるようになりました。立ち上げ当初は、メガネのセオリーにとらわれない、“永遠の素人”のような視点を大切にしたいと思っていたんです。ただ、さまざまな知識が蓄積され、僕自身も以前より分かることが増えてきました。だからこそ今は、得た知識や新たな視点を、ブランドにどう活かしていくかを考えています。

——新しいアイウェアをデザインするとき、どのようなところから着想を得ていますか?
渡辺さん:日々生活する中で気になったことからですね。街を歩いている人を見て「こういうスタイリングの人は、こんなアイウェアをかけているな」と感じたことが頭に残っていたり、昔の写真を掘り下げて形を探したり。思い付いたら描いてみることを、ほとんど毎日のように繰り返しています。
例えば、ストリートやスポーツの空気を少しだけ取り入れたいけれど、ど真ん中のスタイルにするのは難しいと感じている方もいますよね。そういう方が、ほんのりテイストを味わえる形に置き換えられないかと考えることもあります。描きためたものを後から見返して、そのときの気分や世の中の空気に合いそうなものを取り出し、少しずつ形にしていく。バイヤー時代に身に付いた「今なら、こういうものを欲しい人がいそうだ」という感覚も、自然とデザインにも生きているのだと思います。
——デザイナーとして表現したいことより、使う人の姿を起点に考えているのですね。
渡辺さん:僕はもともとバイヤーなので、デザイナーからシーズンテーマを聞いたときも、その理由だけで仕入れを決めることはありませんでした。お客様にどう使ってもらえるか、どんなスタイリングにつながるかを想像できたときに、初めて仕入れたいと思うんです。買い物は、お店からの“説得”と、お客様自身の“納得”がそろって成立するものだと思っています。だからBLANCのアイウェアを作る際も、まず「こういう人には、こういう一本がいい」という考え方を大切にしています。
——BLANCならではの、絶妙な色使いも印象的です。
渡辺さん:形を描く段階で「この色だけは使いたい」と決まっていることもあります。最近はスタッフとミーティングをしながら、色展開を決めることも増えました。中には、ヴィンテージの花瓶から着想を得た色もあります。スタッフとはBLANCらしい色の感覚を共有できているので、さまざまな意見を取り入れながら売れやすい色だけでなく「この色はやってみたい」という少し実験的な色も残しています。

——BLANCのアイウェアを実際にかけてみると、かけ心地の良さも感じられます。こうしたかけ心地は、どのようなものづくりによって生まれているのでしょうか?
渡辺さん:製造については、福井県・鯖江市の職人さんたちを全面的に信頼しています。すべてを機械だけで均一に仕上げるのとは違い、ほんのりとした温かみや趣がありながら、かけ心地はきちんと整っている。長くアイウェアを見ていると、海外で作られたものとはまた違う、日本製ならではの佇まいを感じます。
また、チタンを美しく加工できることも大きな強みです。チタンは軽くて丈夫なうえ、金属アレルギーも起こりにくく、アイウェアに適した素材です。その特性を活かしながら、美しいフレームに仕上げられる点にも、鯖江の高い技術力を感じます。
——見ただけでは気付かないような、細部の工夫もありそうですね。
渡辺さん:例えば、BE009サングラスは、べっこう柄のフレームの表面に約1ミリのダークブラウンの層を重ねています。遠目には落ち着いた茶色に見えますが、近づいたり横から見たりすると、べっこう柄が見えてくる。柄の印象が強く出すぎないので、普段は黒縁しかかけない方にも取り入れやすいと思います。
こうした細かな工夫は写真だけではなかなか伝わりませんが、実際に手に取ると面白さを感じてもらえる部分です。

——今季のラインアップから、特に注目してほしいモデルを教えてください。
渡辺さん:もちろん、どのモデルもおすすめですが、日常使いのメガネとして選ぶなら、まず挙げたいのが「B0024サングラス」です。比較的長く展開しているモデルで、スタッフも男女問わず愛用しています。発表した当時は、少し特徴のあるデザインなので「大丈夫かな」と思った部分もありました。でも、発売当初よりも今のほうが支持が広がっていて、今ではBLANCを代表する一本と言ってもいいくらいのモデルになりましたね。

渡辺さん:2本目は、昨年の秋冬に展開したモデルをサングラスとして仕上げた「B0046サングラス」。独特のフォルムや雰囲気、サイズ感は、ありそうで探すとなかなか見つからないと思います。ブロータイプらしい存在感がありながら、嫌味なくかけられるので普段のスタイリングにも取り入れやすいモデルです。

渡辺さん:最後の3本目は、公園やフェス、キャンプ、街中など、デイリーに気軽に使える「BE019サングラス」です。普遍的な形をベースにしながらほんのりと癖を残し、レンズの周りを削ってわずかな段差をつけるなど、よく見ると分かるこだわりも加えているのもポイントです。
——今回ご紹介いただいた3本はいずれも気負わず使える一方で、細部にはさりげない個性があるバランスが素敵ですね。アナザーアドレスでも、すでに人気のモデルです。
渡辺さん:僕はもともと販売やバイヤーの仕事をしていたので、アイウェアを選んだ瞬間だけでなく、1週間後、1か月後、1年後にも、何度も喜びを感じてもらいたいと思っています。僕自身も、買い物をした後に「これを選んで良かった」と実感することもあれば、友達から「それ、どこの?」と聞かれて、うれしくなることもあります。そうした経験があるからこそ、BLANCのアイウェアも、手にした方に長く喜んでもらえるものでありたい。主張しすぎないからこそ、身につけるたびに、何度も喜びを感じてもらえるアイウェアであってほしいですね。

——SNSやオンラインで情報を集めることが当たり前になった今、アイウェアの選ばれ方にも変化を感じますか?
渡辺さん:以前は、雑誌や偶然立ち寄ったお店でブランドを知り、接客を受けて購入される方が多かったと思います。今はSNSなどでブランドの雰囲気を知り、それをきっかけに来店してくださる方も増えました。一方で、SNSだけでは商品のすべてを理解するのは難しいと思います。実際にかけてみたり、店頭でスタイリングを提案してもらったりして、納得して選ぶ。情報や選択肢が増えた今だからこそ、そうした体験の価値は、むしろ高まっていると感じます。
——アナザーアドレスでは、アイウェアを1か月レンタルし、気に入った場合は購入することもできます。この仕組みについて、どのように感じましたか?
渡辺さん:試着したときだけでは決めきれない方もいると思うので、一度使ってみて「これは自分のものにしたい」と思えたら買えるのは、とてもいいですよね。普段は難しそうに見える形でも、かけてみると意外と似合うことがあります。レンタルであれば、そういう一本にも挑戦しやすいと思います。
また、アイウェアを選ぶときは、顔に似合うかだけではなく、その人のライフスタイルにどれだけフィットするかということも大切です。
——実際の生活の中で試すからこそ、気付けることもありそうですね。
渡辺さん:特にメガネやサングラスは顔の上に置くものなので、家族や友人、パートナーなど、身近な方の反応も意外と大切です。お店で気に入って買ったのに、家に帰って「どうしてそれにしたの?」と言われたら、少し悲しいですよね。1か月あれば、自分の生活に合うかを確かめながら、周りのリアクションも見ることができます。借りているときに「それ、どこの?」「似合っているね」と言われたら「やっぱりこれにしよう」と思えるかもしれません。
——BLANCでは、アイウェアをバッグや靴のように、ファッションの一部として楽しんでほしいという思いも発信されています。レンタルは、そのきっかけにもなりそうですね。
渡辺さん:そうですね。バッグや靴は、その日の予定や行く場所、着ている服に合わせて選びますよね。アイウェアも同じように、「今日は公園へ行くからこれ」「友人と街を歩くからこの一本」と、シーンに合わせて選ぶものであっていいと思うんです。レンタルをきっかけに、これまでアイウェアをファッションの一部として意識してこなかった方にも、洋服やバッグを選ぶような感覚で、もっと気軽に楽しんでもらえたらうれしいですね。

■渡辺利幸さん
BLANC Director/ Designer
国内外のデザイナーズブランドを取り扱うセレクトショップのバイヤーを経て2012年に〈ブラン〉をスタート。日本にはまだまだデイリーユースのアイウェアが少ない現状から、長年関わってきたファッションの感覚と、故郷である福井県の技術を掛け合わせ、実用性とファッション性を兼ね備えたアイウェアを考案。独自の視点は国内外から高い評価を得ている。
公式サイト:https://blanc-products.com/
※外部サイトに遷移します。
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