JFNISTA(ジェイエフ二スタ)による「衣道(ころもどう)」という考え方をもとに、本当に似合う服を選べる「JFメソッド」を15回にわたって毎週お届けする連載企画。
第11回目では、自撮りの活用法とその効能についてお話ししました。第12回目となる今回は、TPOに縛られることなく自分らしく装うための“調光”という技をお伝えします。
これまでのお稽古では、“一歩先のわたし”を装うための服の選び方をお届けしてきました。けれど、そうは言っても、現実ではうまくいかない日もあるのが本音。その背景には、「なりたい自分」と「求められる自分」の間でゆれる気持ちがあるのかもしれません。
「この場にふさわしい格好をしなきゃ」 そう思ったとき、私たちは何を基準にしているのでしょうか?例えば、 オフィス、授業参観、親戚の集まり、友人とのランチ。どれも明確なドレスコードがあるわけではないのに、「これを着たら浮くかも」「派手に見られたくない」と、つい自分でブレーキをかけてしまうことがあります。
実はこれ、誰かに注意されたわけでも否定されたわけでもなく、 “なんとなく”の空気や視線を先回りして気にしてしまっていることがほとんどです。職場に明確なルールがあるケースもありますが、私たちを縛っているのは「他人の目」ではなく「浮いてしまうことへの怖さ」や「目立つことへのブロック」なのです。
「浮くのが怖い」「目立ちたくない」そう感じるのは、きっと過去のどこかで「場に馴染まないことはリスク」と学んだから。空気を読み、角を立てずにふるまうことで、私たちは社会の中で守られてきました。でも、その奥には「自分らしく在りたい」という想いが静かに息づいているはずです。装いを通して、その想いをゆっくりと表現してみましょう。
TPOに合わせて装うというのは、「周囲に合わせて自分を抑える」ことではありません。あくまで「自分を殺さずに、“わたし”のままで場に自然と存在する」こと。まるでお花が、与えられた色と形で静かに咲くように、誰かや何かのためではなく、自分の“咲き方”を慈しむ感覚です。大切なのは、“誰にどう見られるか”よりも、“どんなわたしで在りたいか”を問い続けること。“目立たないように”ではなく、“わたしで在るために”装う。そんな風に視点を変えてみることで、TPOとの向き合い方はもっとやさしく、自由なものへと変わっていきます。
“わたしらしく在る”ことを心の中で納得できたら、次に大切なのは「すでに灯っている光をどれほど引き出すか」という調整の感覚です。ここでいう“光”とは、あなたの内側にある個性や魅力、そして印象キーワードのこと。その光をどのくらい外側に放ち、装いにそっと織り込むか。その濃淡を丁寧に選んでいくことを、JFメソッドでは「調光」と呼びます。
調光とは、光の強さをその場に合わせて変えること。つまり、「自分という存在(光)は変えずに、TPOに応じてその“見せ方”をやわらかく整える」という発想です。印象キーワードを全面に出すことが難しく感じる状況でも、あなたの内側の輝きを無理に押し込める必要はありません。ただその場に合わせて、「どのくらいの輝き方が心地いいか?」を感じてみてください。そして、丁寧に調光してみましょう。
たとえ強めの制約がある環境だったとしても、自分らしさを表現できる余白はきっとあるはず。まずはほんの少しだけで大丈夫です。バッグ、ハンカチ、ポーチ、アクセサリー、靴などの小物に自分らしさを添えてみましょう。特に、鏡を見る際に必ず目に入る耳元のアクセサリーは、効果的なポイントになります。また、内勤の方であれば勤務中はロッカーにしまいがちなバッグをあえて主張のあるアイテムにすることで、さりげなく自分らしさを表現できるでしょう。
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お客様に会う場面ではデニムなどのカジュアルすぎる装いは避けた方がよいかもしれません。ですが、意外と「華やかな色や柄を着てはいけない」とは言われていないもの。フォーマルなデザインのアイテムでも、色や柄で自分らしさを表現することは、上手な調光のひとつです。逆にデザインで遊びたい時は色を抑えるのも手。

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「ガーリー」や「スポーティ」なテイストを取り入れたい場合は、デコラティブなトップスやスポーツブランドのボトムスを、白・黒・ベージュ・ネイビーなどのベーシックカラーで取り入れるのもおすすめです。
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また「強さ」や「遊び心」、「自由」や「生命力」などを表現したいときは、アニマル柄が活躍します。ですが、多くの方が「職場にアニマル柄は難しい」と思いますよね。そんなときは「ゼブラ柄はモノトーンである」と捉えてみましょう。こんな風に柔軟に解釈すると、装いの選択肢がぐっと増えますよ。
「TPOに自分の印象キーワードが合わない」と感じる場面もあるかもしれません。「華やか」や「自由」といったキーワードを持っている人が、落ち着いたトーンが求められる場面に立ったとき、「浮いてしまうかも」「わたしらしさを出せない」と感じることもあるでしょう。例えば「黒スーツと白インナー」という縛りがあるときには、「品のある装い」が求められることが多いです。そんなときは、その場に適したかたちで印象キーワードを“翻訳”する感覚をもってみてください。

印象キーワードは固定されたルールではなく、“にじませ方”や“濃淡”で自在に遊べるもの。ジャケットの袖口のデザインにこだわってみたり、スリーピースでカッコよさを加えるのもひとつの手。ジャケットのボタンを閉じれば隠れてしまう白インナーにさりげなくデザイン性を取り入れることで、「品」と「わたしらしさ」を両立させることもできます。大切なのは、“わたしらしさ”を手放さずに、その場に心地よく調和させる工夫。印象キーワードの要素を散らして忍ばせることで、ドレスコードを逸脱せず、違和感なく馴染むスタイルが叶います。
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とは言え、どうしても外側で自分らしさを表現するのが難しい、できるかもしれないけれど怖い…という場面もあるかもしれません。そんなときは、本当に“誰にも見えない場所”に自分らしさをそっとしのばせてみてください。例えば、下着。自分だけが知っている内側に放たれる“わたし”の光は、目に見えなくても、あなたの自信と余裕を育ててくれます。
TPOを意識しながらも、“わたしらしさ”は手放さない。そのために大切なのが、「調光」という視点です。光を強く放つ日もあれば、やわらかくにじませる日もある。けれど、どんな日も“あなた自身の光”がそこにあることを、どうか忘れないでください。
ほんの少しの勇気を持って“わたしらしい装い”をしてみると、不思議と褒められる機会が増えていきます。それは、あなた自身が自分を丁寧に扱っているから。そして、そのしなやかな光がまわりの人の心にも静かに届いているからです。やがて周囲は「あなたはそういうスタイルの人なんだね」と少しずつ受け止めるようになり、「素敵」「よく似合っている」と肯定の言葉があなたに届くようになるでしょう。さらに面白いことに、そんなあなたの姿に触発されて、「私も本当はこんな装いがしたい」と心の奥の願いをそっと言葉にする人が現れはじめるのです。つまり、装いはただの自己表現ではなく、まわりを照らす静かな光にもなるのです。
誰かに認められるためではなく、“わたし”のために纏う。そう思えたとき、飾らない存在そのものの光はもっと自由に、もっとしなやかに広がっていきます。そしてその軽やかさは、いつの間にか場の空気までゆるめていく。一人ひとりが制約の中でも“わたし”で在れる場は、きっと健やかで創造性に満ちた空間になるはず。あなたがその最初の光になっても、いいのです。
“似合う”の枠をもっと広げて、自分らしい装いを自由に楽しむ。次回、第13回のお稽古では、メンズアイテムを取り入れた新しいスタイルの可能性に迫ります。
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