「傷や汚れなどで着ることが難しくなってしまった服を捨てずに、新しいファッションとして生まれ変わらせる」をコンセプトにかかげる「reADdress」。アナザーアドレスが展開するアップサイクルブランドで、毎回さまざまなクリエイターやデザイナーとコラボして、この世に1つしかない魅力的なアイテムを創りだしています。
今回コラボレーションしたのは、お笑いコンビ・ラブレターズとして活動する一方で、自身のブランド「塚本ミシン」を立ち上げ、服のリメイクを行っている塚本直毅さん。「塚本ミシン」の原点から、アナザーアドレスのために制作いただいた5つのアイテムに込めた想いまで、そのものづくりに迫ります。
編集部:塚本さんがミシンを始めたのは、コロナ渦だったそうですね。
塚本さん:そうなんです。2022年に、相方の溜口がコロナにかかったのがきっかけでした。彼が復帰まで10日間ほどあったので、その間に何か新しいことをやろうと思い、ゲーム配信に挑戦しようとしたんです。それでゲームを見にビックカメラに行ったんですが、たまたまミシンコーナーを通りかかって、黒いミシンが目に入って。値段も手頃だったし、何より見た目がかっこよくて、気づいたら買っていましたね(笑)。
編集部:まさに運命ですね。そのあと、実際にミシンを使ってみていかがでしたか?
塚本さん:最初はミシンの使い方もまったく分からなかったので、YouTubeを見ながら、ボビンのセットの仕方や縫い方を独学で覚えるところから始めました。それから、家にあったサイズアウトした服をリメイクして、最初に完成したものを実際に着てみたら、「あ、全然着れるじゃん!」って思ったんです。そこから一気に楽しくなってしまって、気づいたら10日間で35着くらい作っていました(笑)。

編集部:塚本ミシンとしての活動を始めるきっかけは、先輩芸人さんの助言が大きかったそうですね。
塚本さん:そうなんです。最初は、相方の療養中に何かやろうと思って始めただけで、自分の中では正直、自己満足で終わるものだと思っていました。でも、そのことを普段から親しくしている芸人の先輩であるラバーガールの飛永翼さんに話したら、「それ、絶対に続けたほうがいいよ」って言われたんです。それが大きなきっかけでした。
そこから少しずつ周りの芸人たちから、「裾上げできますか?」とか「ここ直せますか?」みたいな、服にまつわるちょっとした相談を受けるようになったんです。中には、少し変わった依頼もありました。同じ事務所の先輩であるザ・ギースの尾関さんから、「舞台で“巨人”として出たいから、めちゃくちゃ大きいズボンを作ってほしい」と相談を受けたこともあります。もともと体格の大きい先輩なんですが、さらに高い竹馬のようなものに乗って登場する設定だったので、サイズ感も含めて完全にオーダーメイドでした。
そういった舞台用の衣装制作まで任せてもらえるようになり、気づけば「あいつ、ミシン始めたらしいぞ」みたいな感じで噂が広がっていて(笑)。自然と、自分の周りで服を通じたやり取りが増えていきましたね。

編集部:この先、「塚本ミシン」としてどんな展開をイメージをされていますか?
塚本さん:正直、今の時点で大それた目標があるわけではないんです。ただ、もし「こういう服が欲しい」と言ってもらえたときに、すでに誰かが着なくなった服を使って新しい服を作れたら、それが一番ちょうどいいなと思っています。
服って、実はもう十分すぎるほど世の中にあるじゃないですか。そう考えると、新しく作るよりも、部活着や剣道着など、役目を終えた服を手元に集めて、それを別の形に変えていくほうが、精神的にもすごくしっくりくるんです。いらなくなった服を生まれ変わらせたものが、「これ、いいね」と言ってもらえる存在になるなら、それが一番うれしいですね。
今はまだ、自分ができる範囲で、そういう服づくりを続けていきたい気持ちが強いです。将来的に型紙を本格的に学んで、新しいことに挑戦したくなるかもしれませんが、少なくとも今は、“余っている服を活かす”という方向に、一番気持ちが向いています。

編集部:お話を聞いていると、「すでにある服をどう活かすか」という考え方が、塚本さんのものづくりの軸にあるように感じました。そうした視点から見て、アナザーアドレスのような服をレンタルするという仕組みについては、どのように感じていますか?
塚本さん:最初にレンタルのお話を聞いたときに、「あ、そうか。その手があったか」って、正直ちょっとハッとしたんですよね。実際に倉庫に行かせてもらって、服がずらっと並んでいるのを見たときも、普段使える服だけでなく浴衣もあって、「うわ、めっちゃいいじゃん、これ」って素直に思いました。
これまで自分で作った服は、自分で着たり、身の回りの芸人にあげたりしてきました。でもやっていくうちに、「これをお客さんに届ける機会って、どうにか作れないかな」と考えるようにもなって。ただ、リメイクの服って、一着にかかる時間や手間が、普通に作るのとは全然違うくらいかかるんですよね。そう考えると今回の取り組みのように、レンタルで回してもらえるのは、正直すごくありがたいなと思いました。
一回で消費されるんじゃなくて、レンタルという仕組みの中で戻ってきて、たくさんの人に着てもらえる。その循環は、今の自分にとってすごくしっくりくるし、嬉しいことだと思いました。
ここからは、実際に塚本さんに制作いただいた5つのアップサイクルアイテムを、塚本さんのコメントとともにご紹介します。

こちらはレディースのアイテムを使用して制作したのですが、レディースの服を使うのはほとんど初めてだったので、どう組み合わせるかはかなり考えました。デニムとニットを合わせたいなと思っていたときに、ちょうど柄のスカートが目に入って。「ここは使えそうだな」という部分を見つけて、柄を差してみました。フロントにインパクトのある柄がくるようにしているのもポイントです。(塚本さん・以下同)
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オーバーシャツっぽいものを作りたいなと思っていました。ポケットの付いたミリタリーっぽい雰囲気の服があったので、それに合うようなシャツを探していたんです。そうしたら、もともと切り替えデザインになっている黒いシャツが見つかって、切り替え部分に、色味が近いグリーン系の素材も使われていたので、「これなら合わせられそうだな」と思いました。袖口にドッキングしたニット素材は、着たときに袖口がたまる感じが絶妙で、個人的にもすごく気に入っているポイントです。
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今回の中では、一番レディースらしい仕上がりだと思います。素材の選定をさせていただく中で、レディースの服がすごく多かったので、せっかくだし「レディースっぽいものを作ってみようかな」と思って作りました。素材も、自分だったら普段あまり選ばないようなものを中心に選びました。個人的には、フロントに入れた縦の切り替えが気に入ってます。レディースシャツとしては着丈が少し長めなのですが、逆にその直線的なラインが効いて、全体を引き締めてくれていると思います。
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素材をピックしているときに、肩回りに柄が入った黒いシャツが一番最初に目に入ってきて、「これ、このままじゃ着られないんですか?」って思うくらい、すごくもったいなく感じたんですよね。ダメージ以外はできるだけ残して、この柄を中心に、なんとか活かせないかなと思いながら作っていきました。ブラックとネイビーのバランスも、結果的にすごくきれいに収まったと思いますし、白いステッチが程よく効いているのもポイントですね。袖にあしらったフリルも、着たときに表情が出てかわいいなと思っています。
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白黒のレースシャツを最初に見たとき、「おしゃれなレースのシャツだな」と感じて、ダメージを落とせば、まだ使えるなと思いました。ただ、真ん中の装飾がかなり強かったので、そこをどう活かすかは結構悩みましたね。いろいろバランスを取りながら組み合わせていった結果、チェック柄を入れてみたり、あえて色や柄を少しごちゃっとさせたりして、ちょっとチカチカするくらいの感じに仕上げてみました。
切り替え部分にできた段差も、今回はデザインとしてそのまま活かしています。自分用だったら、もう少し揃えようかなと思うところなんですけど、今回はあえてそのままにしました。サイドが垂れる感じや、歩いたときになびく表情も含めて、この服の面白さだと思っています。
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■塚本直毅(つかもとなおき)
1984年生まれ、静岡県出身。2009年、大学内で知り合った溜口佑太朗とお笑いコンビ・ラブレターズを結成。コント執筆担当。ドラマや映画の作家としても活躍。2024年のキングオブコントでは、5度目の決勝進出にして17代目王者に輝く。コロナ渦をきっかけにミシンと出合い、2022年にYouTubeチャンネル「塚本ミシン」を開設。2025年2月には、初のエッセイ集「コントとミシン」(光文社)を刊行。
■塚本直毅さんのX:
■塚本ミシンのYouTube:
https://www.youtube.com/@tsukamotosewingmachine
■ラブレターズ公式YouTube:
https://www.youtube.com/@loveletterzofficial
■塚本さんのnote
https://note.com/tsukamoto1228
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