2024年8月に始動した、衣料品アップサイクルプロジェクト「roop」。その一環としてアナザーアドレスが実施するファッションデザインコンテスト「roop Award 2024-2025」の最終審査が2025年2月15日(土)に行われ、ついにグランプリが決定しました。今回は、「プロ部門」のファイナリスト10名の作品をショーレポートと共に一挙公開します!
見事、総合グランプリに輝いたマイア ハリマ(Maia Harima)は、妊娠という特別な経験から着想を得て、「セカンドスキン」をテーマにコレクションを発表。グリーン、ブルー、オレンジ、ホワイトのいずれか1色で統一された、シンプルながらもエネルギッシュなムードを纏うアイテムが展開されました。
中でも目を引くのが、鮮やかなグリーンのニットポンチョ。3本のパンツと1着のワンピースを解体し、それぞれからダメージのない部分を慎重に選定。幅6cmのストリップ状にカットし、パッチワーク技法を用いて1枚の布へと再構築した後、リサイクルポリエステル製のサステナブルな中綿によってふっくらとした立体感を演出しました。纏うことで、まるで抱擁されているような柔らかさと温もりを感じさせるこのポンチョは、「セカンドスキン」という本コレクションのコンセプトを体現する1着と言えます。
ステナビリティを重視し、伝統と現代の調和をテーマにしたデザインを展開。各コレクションでは、ユニークで芸術的なアプローチを通じて、文化的アイデンティティや感情の再構築を探求している。デザイナーのマイア・ハリマ(Maia Harima)は、アルゼンチン出身で、現在東京を拠点に活動。日本の伝統的な着物をアップサイクルし、手織りのテキスタイルや現代的なデザインと融合させることで、独自のファッションスタイルを生み出している。2020年にブエノスアイレス大学(UBA)でファッションデザインの学士号を取得後、2023年には文化服装学院大学院でファッションテクノロジーの修士号を取得。
準グランプリを受賞したボディソング(BODYSONG.)は、ブランドの知名度や服のジャンルにとらわれず、音楽のプレイリストのようにすべての服をフラットに扱うイメージでコレクションを制作。元のアイテムをすべて解体し、パッチワークによって生み出した新たな生地を用いて唯一無二の1着を作り上げています。
中でも目を引くのは、ダークカラーでありながら主役級の存在感を放つベスト。ビジューが煌めく襟をそのまま取り付けたり、一度取り外したフラップポケットを再配置したりと、元のデザインを巧みに活かした仕上がりが魅力です。
国内デザイン事務所で様々な経験を積み、独立後BODYSONG.を立ち上げる。<IMPROVISAITION(即興性)>をメインキーワードとし、アートやデザインのプロジェクトにも参加。各界のクリエイターとのコラボレーションワークを通じて独自の立ち位置を築き上げる。
特別賞に輝いたアンヨーテイラー(AN YO TAILOR)は、ワンピースとジャケットの2型を提案。ワンピースは、瓶口を包装紙で絞った際に出来るシワを、タックやギャザーで表現。体型などを気にせずに楽しめる、ゆったりとしたシルエットが印象的です。
一方、ジャケットは、ワンピースを作る上で発生した残布で制作。当て布として多種多様な生地を使い、その上に刺し子を模したステッチを施すことで、インパクトのあるグラフィカルな1着へと昇華させました。
《Play with clothes》をコンセプトに2020年からブランドスタート。デザイナー本人がデザイン、パターン、縫製を一括して行う一点物を中心にハイクオリティな加工技術をフューチャーしたグラフィックアイテムやアーティストとのコラボアイテムを展開。
コーティー(KoH T)がクリエイションに取り入れたのは、生地の上に刺繍糸や毛糸を埋め込む「ニードルパンチ」という技法。解体した服の生地を重ねていくことで、元の面影を残しながらも、衣服の上に新しい抽象的な模様を描き出しました。
たとえば黒のロングコートは、ニットの袖を融合させることで、まるで抱きしめられているように見える、温かみのある1着へと昇華。インナーにはボリュームのあるワンピース、頭にはぽってりとした厚みのある帽子を合わせて、どこか異国の情緒を感じさせる佇まいを演出しています。
Creation & Imagination (創造と想像)をキーワードに、立体裁断とハンドワークで洋服を制作することで新しいクリエイティブなシナジーが生まれることを目指す。人体・造形美・精神の3軸の考え方でただ美しいもの、自然、アート、文化を表現するのではなく、それに対する日本的な考え方や、デザイナーが解釈して構築する服のデザインを重視している。
“リメイクに見えないリメイク”を意識しながら作品制作に取り組んだというジュン オカモト(JUN OKAMOTO)。無理な切り替えやパッチワークを施さず、元の服のディテールを生かしたアイテムを提案しました。
中でも目を引くのは、同型のブラウス3枚を解体・再構築して作ったというシャツワンピース。ブラウスの袖を解いてワンピースの裾に取り付けるなど、元のデザインを巧みに活かしながら、過去の着用者が込めたストーリーにリスペクトを捧げた1着に仕上げています。
1997年文化服装学院を卒業後、パリのStudio Bercotに入学。Arexandre Matthieuのアシスタントを経て自身のブランドを2005年よりパリを拠点にスタート。シーズンごとにデザイナー自身が物語を書き、「彼から見た彼女の服。」というコンセプトのもと、物語の中に出てくる情景をプリントやディテールに落とし込む。
コハル(KOHAL)が提案したのは、華やかなシーンにも馴染む上品な洋服。大人の女性に相応しい、洗練されたデザインのアイテムが豊富に展開されました。
たとえば、艶やかなブラックのジャケットは、裾に繊細なプリーツをあしらい、シンプルながらも心ときめく1着に。ボトムスには、星モチーフやチェック柄の生地をランダムにパッチワークしたロングスカートを合わせ、遊び心のある華やかなムードを演出しています。
コハルは服作りに情熱を注ぐ齋藤こはるによる、レディースウェアブランド。作家自身がデザインから制作に至る全てを手掛け、唯一無二の一点を生み出している。デザイナーと生地の『運命の出会い』から始まり、お客様とお洋服の『運命の出会い』となる事を願い、長く寄り添える一点を提供。
“思い出を纏うセットアップ”をコンセプトに掲げたカナ カワサキ(Kana Kawasaki)。入学式のために購入したスーツや、高校時代に初めて買ったロングスカートなど、着用者の思い出に寄り添いながら、新たなシーンで輝ける1着を生み出しました。
中でも注目したいのは、「入学式用に購入したものの、ダイエットに成功してサイズが合わなくなり、結局一度しか着られなかった」というストーリーに着想を得たセットアップ。オーバーサイズを活かし、別のジャケットを重ねることで、レイヤード風のレディースジャケットへと昇華。部分的に縫い留めることで立体感を生み出し、女性らしいシルエットを演出しているのが魅力です。ショーでは、リサイズされたメンズパンツと一緒に提案されました。
コンセプトは「人生は” 毎日がドラマである” という気づきに寄り添う」。平凡な日々にファッションで色を与え、何者でもないと感じているあなたも、着る服によってどんな役にもなれる。装うことで見えてくる視点で、ありふれた日常もドラマとして楽しんでほしいという想いを込めて制作している。
女性らしさと男性らしさが共存するユニークな服を提案したトキオ(tokio)。リボンやレースといったフェミニンなディテールに、ワークやミリタリーの要素を掛け合わせることで、甘さの中に無骨なムードを感じさせる1着に仕上げています。
その好例となるのが、デニムパンツにレース生地をドッキングしたボトムス。ワークウェアの定番アイテムにあえて繊細な素材を掛け合わせることで、異なるテイストが混同する独創的なパンツへと昇華させています。ショーで一緒に提案されたトップスもまた、フラワープリントが浮かび上がるレースに、端正なストライプ地を組み合わせることで、程よく甘辛MIXしているのが特徴です。
デザイナーの木村 登喜夫は1985年生まれ千葉県出身。文化服装学院卒業後、数々のOEM生産会社やブランドで経験を積み、2021年よりメンズブランドtokio始動。サンプル製作、加工等自身の手で全て作り上げる事をアイデンティティとしてスタートしたブランドは5年目に東京ファッションアワードファイナリストとして勝ち残り、2025年1月にはパリ展、3月には楽天ファッションウィークランウェイショーを行う予定。
服が持つ魂を再解釈し、新たな境地を切り開く——。そんな自由でエネルギッシュな未来への旅の出発点をイメージしながら、服作りに挑んだアヤーム(AYÂME)。子供服やウィメンズウェアに宿る思い出や素材の個性に思いを馳せ、それらを次なるストーリーへとつなげる“未来へのバトン”としてのメンズウェアを生み出しました。
一見シンプルなジャケットは、襟の内側やカフスにブルーの猫柄プリントをあしらった遊び心あふれる1着。メンズアイテムにあえてフェミニンな要素を取り入れることで、甘さとシャープさが交差するフレッシュなムードを演出。ショーでは、同じ猫柄プリントのボトムスを合わせた、心ときめくスタイリングで提案されました。
セントラルセントマーチンズ卒、CHANELで刺繍デザインを手掛けた竹島綾が手掛けるアヤーム。「Wear your story」をコンセプトに、ロマンティック×ソリッドなデザインで革新とクラフトを融合。自由な発想とユニークな素材使いで、繊細かつ大胆な世界観で着る人の個性を引き立てます。
フルタ(furuta)が提案したのは、「環境の嘆き」「洋服との思い出」「時代の流れ」——3つの声(Voice)を紡いだ服。藍染、水洗い、刺繍、パッチワークなど多彩な技法を駆使し、大切にされてきた服を魅力的に生まれ変わらせました。
中でも目を引いたのは、ファイナリスト作品の中で唯一の和装。もともと長襦袢だったものを一度解体し、生地に戻して藍染(※)を施し、再び羽織へとリメイク。さらに、コデマリやポピー、アネモネなどの花々を、手刺繍で繊細に描き出しました。ヴィンテージドレスのような優美な刺繍と、藍染の法被をドレスアップしたイメージを融合させた羽織は、新しさと伝統が交差する唯一無二の存在感を放ちます。
(※)藍染は「藍屋テロワール(https://aiya-terroir.com/)」によるもの。
「ドレスを日常に。」をコンセプトに、全ての女性性に響く服を提案。尊い日々の営みに共存する有機的な美を刺繍などで表現し、生活に寄り添うデザインを展開。WORLD、KEITA MARUYAMAでの経験を経て、ブライダルや松任谷由実氏の衣装を手がけ、2017AWよりfurutaを本格始動。
いかがでしたか?作品は、2025年3月以降順次アナザーアドレスでのレンタルがスタート予定です。どうぞお楽しみに!